年下ヤンキーをなめちゃいけない理由
そう言われ、一瞬、時が止まったかのような感覚に陥る。
「……そ、そうなんだ」
どう反応すればいいかすらわからず、曖昧な笑みを返すと、彼女の口角も緩く弧を描いた。
って、私にどう反応してほしいわけ……!?
そんなこと私に言ったって、何か変わるわけじゃあるまいし……。
しかも、初対面の私に思いを寄せる相手を暴露しちゃうなんて!
いやいや、私には人の好きな人を広めるなんて悪趣味はないけど……!
そんなこんなで、心の内で騒がしい言い訳大会が始まり出したところで、お人形さんみたいな女の子は再び口を開いた。
「私、一年の岩木桃香です。って、もう関わること、ないかもしれませんね」
あは、と笑いを付け足す彼女の目は、笑っているようで全く笑っていない。
そんな笑いに縮み上がる口角。
「か、刈谷海花……です……」
今日が初めて会った日なのだが、私と桃香ちゃんの間にはどうやら、マリアナ海溝よりも深い溝があるらしい……。