年下ヤンキーをなめちゃいけない理由






朝の休み時間、終わっちゃったよ……。
朝のうちにマフラー返しに行こうと思ってたのに。


桃香ちゃん、きっと毎日休み時間、流くんに会いに行ってるんだろうな。

マフラー返しに行った時、桃香ちゃんと会ったら……。


ダメダメ、そんなこと考えてても仕方ない。

だって、桃香ちゃんが流くんのことを好きなように、私も流くんのことが好きなんだから。


気にすることじゃない。


ぺちっと自分の頬を叩いて喝を入れると、なんだか雑念が消えた気がする。


そうして朝のHRも終わり、一限の準備をしていると、私の机にやってきた詩織が、机の横にかかった紙袋に目をやった。


「マフラーだ。……男の子用の……。もしかして……?」


ニヤニヤと笑みを浮かべる詩織。
な、なんでそんなに笑ってるの……!


「付き合ったの?」


「つっ、つつ、付き合ってないよ……!」


「えー、まだ告白してないの?」


「大体、なんで好きって知ってるの!?」


詩織にそんなの、言ったことないのに……!
も、もしかして桃香ちゃんが早速広めてるの……!?


「もしかして、海花気づいてなかったの?海花、黒川くんのこと好きって気持ちダダ漏れだよ!」


え、えぇ……?
うそ……そんなになのかな?


「だってだって、ずっと黒川くんのことで悩んでるし、黒川くんと話せた次の日とか、嬉しそうにしてるし!」


私ったら、そんなに表情や機嫌に出てたの……!?
恥ずかしくなって顔を覆うと、詩織は苦笑いして私の肩にポンっと手を置いた。


「実は、文化祭の日も、黒川くん教室まで来てたんだよ?」

「えっ……」

「私に話しかけられて、海花先輩いますかーって。黒川くんが来ただけでクラス大騒ぎだったよ」


看板娘として学校回ってるって言ったらすぐ出ていっちゃったけど……と、困ったように笑う詩織。

文化祭の日って……怖い人たちに襲われそうになった時、流くんが助けに来てくれて……。


教室まで、会いに来てくれてたんだ……。


心の内側が、なぜかトクンと鳴る。

……私に、会うためのだけに……。



「ほら、今の海花の顔。すっごい嬉しそう!」


「そんなこと……」


「そんなことあるって!両思いだと思うんだけどなぁ……」



その瞬間、一限の教科担任が教室に入ってきた。
えっ、もう始まるの……?



「席につけー、始めるぞー」



先生の声で、みんなが一斉に自分の席に戻り始める。それとともに、詩織も小さく手を振って戻っていってしまった。



りょう、おもい……。


そんな奇跡みたいなこと、あるのかなぁ。流くんが私のことを好きだなんて、ちっとも想像できないや。


だから、絶対に実らない恋なんだろうな……。


桃香ちゃんと2人で並ぶ流くんの姿が思い浮かぶ。やっぱり、あの2人はお似合い。

年も近くて、美男美女で。
桃香ちゃんと私を表すなら、ミジンコとモデルさん。

もちろん、ミジンコが私の方なんだけど。



それでも、流くんが好き。

流くんの……彼女になりたいって。そう思うのは、叶うことのないくらいわがままなことなのかな……。







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