年下ヤンキーをなめちゃいけない理由
「っ……!」
「俺の中身を好きだって言ってくれて、俺すげぇ嬉しかったです。……文化祭ん時だって、メイド服着てる先輩のこと、直視できなかったし」
私の頭に顎を置いて、そんなことをペラペラとしゃべり始める流くん。
「他なんて、視界に入ってない。海花先輩しか見たくない」
さらに強く抱き寄せられる。
いつのまにか止まっていた涙。
それに、いきなりのことすぎて頭がついていかない。
「海花先輩、俺の彼女になってください」
ただ、そんな流くんの優しい声で言われた言葉に、何度も頷いていたことだけは、はっきりと覚えていた。
五限目の始まるチャイムが、隣の校舎で聞こえた___。
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「海花先輩」
何分経ったのだろうか。ずっと抱きしめてくれている流くんに甘えて、涙を流して腫れてしまった目をゴシゴシと擦っていると、突然名前を呼ばれた。
腫れた目、流くんに見られたくないなぁ。そんなことを思いながら、見上げると、不意に視界が暗くなった。
何かが近づいてくる感覚があって、咄嗟に目を瞑ってしまったから何も見えなかったけど、瞼に触れるあたたかくて柔らかい何か。
「そんなに擦ったら痛い」
サラサラな金髪がおでこに当たって少しくすぐったい。
「でも……腫れちゃった……」
「……泣かせてすみません」
流くんは私の頬に手を添えると、親指で涙の跡をなぞった。
「好きです、先輩」
もう聞いたよ、その言葉。
ちゃんと届いてるよ。
流くんは、「一生このままでもいいな」と呟いた。