年下ヤンキーをなめちゃいけない理由
___とは言ったものの。
完全に私、うっとうしいと思われた。きっともう彼は来てくれないだろう。
「はぁぁ……」
これからどうすれば……と、大きなため息をつきながら帰り路を歩いている時だった。
「なに辛気臭い顔してんだよ、海花」
トボトボと歩く私の背中にぽんっと手を置かれ、振り向くと、長身の男子が立っていた。
「……なんだ、優太か……」
「なんだってなんだよ」
はっ、と短く笑う優太とは、家が隣同士で、保育園から家族絡みで仲が良かった。俗に言う"幼馴染"という関係。
「ってか、海花って部活入ってないよな?帰り遅くねーか?」
「え、あぁ、たしかに……」
「何してたんだよ」
「教育係、だけど……」
「……はぁ?」
心底意味がわからない、というような表情をされて、再びため息をつく。
「先生に頼まれたんだ、一年生の面倒を見てくれーって」
「なんだそれ」
お前が教育係とか……って爆笑している優太の背中を叩いてやる。
「今頑張ってるところなんだから!」
「何を頑張るんだよ?大体、一年の教育係とか、そんな係ないよな?誰なの、そいつ」
そこで、ふと思った。
そういえば私、彼のこと、何にも知らないなぁ。
名前くらい、聞いておけば良かったかも。なんて思いながら、優太からの質問攻めに淡々と答えていく。
「……そいつって女?……だよな……?」
「男の子だけど」
「っ、はぁ!?おまっ……なに……なんで」
「何をそんなに慌ててるのよ」
男子だと知った瞬間、ぎょっとした表情で慌てふためく優太。
「……そいつのこと、好きなのかよ」
「なんでそうなるの!あるわけないじゃん。なんなら私、嫌われてるもん」
「あっそー」
わかりやすく機嫌が良くなる。口笛まで吹き出して。
本当に何がしたいのやら。
「あ、私寄りたいところあるんだった。優太、先帰っていいよ」
「は?行くし。女一人で行かせねーよ」
「?ありがと」
お母さんから頼まれていた食材を、スーパーへ買いに行くつもりだったのだが、どうやら荷物持ちとしてついてきてくれるらしい。
「さっさと行くぞチビ」
「はぁー?チビじゃないですー!」
薄暗くなった空には、うっすらと星が瞬いていた。