年下ヤンキーをなめちゃいけない理由
12月の半ば。
登校の道は、なんだかいつもよりも明るく見える。
流くんから好きだと言われてから、数日が経った。
___流くんと付き合ってから、数日が経った。
最初は、無愛想で、冷たくて、不良な1年生だって思ってた。
でも今は違う。
金髪でピアスだってしてるけど、とっても優しくて、かっこよくて……。
そんな人と、好きになって付き合うことになっちゃうなんて、あの頃は想像もしてなかったなぁ。
そんなことを考えながら、1人でクスッと笑っていると、いきなり誰かから背中を叩かれた。
「いっ……た、何すんの優太!」
「なんだよそんなツラして。気持ちわりー」
「はぁー?なんでそんなこと言うの!」
「真似してやろーか?」
いつものように意地悪な笑みを浮かべた優太が、私の横に並んだ。
朝からうるさいなぁ……。
ニヤニヤしちゃってたのを見られたことが恥ずかしくて、顔に熱が集中するのを感じる。しかも、優太に見られたし……。
優太は、おちゃらけるように先ほどの私の表情を真似する。
「もー!やめてよー!」
「はっ、お前いつもこんな顔だけどなー?」
なんでそんなに意地悪言ってくるんだろう……。私に意地悪するくらいなら、勉強でもしてればいいのに!
っていうか、もうイジメだよ!
「っ、私だって……っ、気にしてるのに……」
顔を伏せて、声を小さくすると、案の定、隣から焦ったような優太の声。
「っわ、わりぃ、そんなこと思ってねーよ。……な?」
私の顔を覗き込むように、申し訳なさそうに謝る優太。
「ま、嘘なんだけどね。懲りた?」
ふんっ、と笑ってやると、優太はキーーーッと悔しそうに私の頭をはたく。
「なんかお前、今日元気すぎね?キモい」
「キモいって……」
はぁ、とため息をつく。
朝からよくそんなこと女子に言えるよね……。
「例の1年から告られてもした?」
「……」
「……………………マジ?」
無言を肯定と受け取ったのか、優太は本当に予想もしてなかったのだろう驚きの反応だった。
そんなに私、雰囲気変わったのかなぁ。
今日の朝、お母さんにも「髪のセットに時間かけてるのめずらしいわね。彼氏でもできたの?」って、つっこまれたし……。
みんな鋭いなぁ。
「黒川……か?」
「……だっ、だからなに!関係ないじゃん!」
改めてその話をすると、恥ずかしくて顔を背ける。
「……俺のことも見ろよ」
ボソリとつぶやかれた優太の言葉は聞き取りづらくて、聞き返したけど、その代わりにデコピンを食らった。
「だからってニヤニヤすんな」
先学校行くわ、そう言っていつもの笑顔で去っていった優太が、どこか寂しそうだったのは、私のきのせい……なのかな。