年下ヤンキーをなめちゃいけない理由

優太の本音







とうとう二月に入り、本格的に受験に向かって勉強する時期となった。



「はぁー……」


「海花、お前まじでやりすぎなんじゃねーの」


「そうだよ、ちょっとだけ休みなよ」



昼休み。


詩織と一緒に参考書とにらめっこをしていたら、いつのまにか優太が教室へ来ていて。



どうやら勉強に混ぜてほしいらしい。



「優太は就職、するんでしょ?」


「まー、そうだけど勉強して損はないだろ」



ふんっと鼻を鳴らす優太。なんなのよ、もう。



「どうせバラバラになるし。一緒にいたい相手と一緒にいて何が悪いわけ?」



「……好きにすればいいけど……」



それにしても、優太には同じクラスに友達も多いはずなのに、どうしてわざわざ私たちのクラスに……。







「ちょっと優太くん、攻めすぎじゃない?」


「いーんだよこのくらいで。……どうせ聞いてねーよ。どのみちもうすぐ言うし」









そんな会話を二人がしていたことは、私は知らない。




「そっかぁ……バラバラになるんだね、みんな」




そう思ったら、少し寂しい……。
詩織は都内の大学に。
優太は都内に就職。



そして私は、県外の大学へ。



学校で毎日会って、話して、笑ってたこの日常が当たり前じゃなくなるんだ……。



それに、県外の大学へ進学するわけだから、もちろん知り合いなんていない。一人で生活できるかなんてわからないし、むしろ私なんかが一人で生きていけるのだろうか、そんな不安でいっぱい。





そして、流くんとも簡単には会えなくなっちゃうってこと。





会おうとしなくても会えていたこの環境がなくなったら、会おうとしなきゃ会えなくなっちゃう距離になる。


絶対に会いに行くけど……それでも、やっぱり寂しい。




「次会うのは二十歳の集いになるんだろーな」


「まあ、会おうと思えば会えるけどね!」




なぜか遠い目をして微笑む優太と、少し寂しそうに笑う詩織。

二人の表情が、別れの時期が刻々と近づいてることを表してる。




「あっ、もう昼休み終わっちゃう!片付けないと、ほら、優太くんも帰って!」




さすが学級委員長の詩織。
いち早く授業が始まることを感知して、慌ただしく動き始める。




「じゃーな、海花」


「はーい」




じゃーなって……同じ学校内にいるのに?




「優太くん、少しでも多く会話したかったんだろうなぁ」




そんな詩織の言葉は私の耳に届くことはなく。



五限を知らせるチャイムが校内に鳴り響いた。








< 46 / 66 >

この作品をシェア

pagetop