年下ヤンキーをなめちゃいけない理由
優太の本音
とうとう二月に入り、本格的に受験に向かって勉強する時期となった。
「はぁー……」
「海花、お前まじでやりすぎなんじゃねーの」
「そうだよ、ちょっとだけ休みなよ」
昼休み。
詩織と一緒に参考書とにらめっこをしていたら、いつのまにか優太が教室へ来ていて。
どうやら勉強に混ぜてほしいらしい。
「優太は就職、するんでしょ?」
「まー、そうだけど勉強して損はないだろ」
ふんっと鼻を鳴らす優太。なんなのよ、もう。
「どうせバラバラになるし。一緒にいたい相手と一緒にいて何が悪いわけ?」
「……好きにすればいいけど……」
それにしても、優太には同じクラスに友達も多いはずなのに、どうしてわざわざ私たちのクラスに……。
「ちょっと優太くん、攻めすぎじゃない?」
「いーんだよこのくらいで。……どうせ聞いてねーよ。どのみちもうすぐ言うし」
そんな会話を二人がしていたことは、私は知らない。
「そっかぁ……バラバラになるんだね、みんな」
そう思ったら、少し寂しい……。
詩織は都内の大学に。
優太は都内に就職。
そして私は、県外の大学へ。
学校で毎日会って、話して、笑ってたこの日常が当たり前じゃなくなるんだ……。
それに、県外の大学へ進学するわけだから、もちろん知り合いなんていない。一人で生活できるかなんてわからないし、むしろ私なんかが一人で生きていけるのだろうか、そんな不安でいっぱい。
そして、流くんとも簡単には会えなくなっちゃうってこと。
会おうとしなくても会えていたこの環境がなくなったら、会おうとしなきゃ会えなくなっちゃう距離になる。
絶対に会いに行くけど……それでも、やっぱり寂しい。
「次会うのは二十歳の集いになるんだろーな」
「まあ、会おうと思えば会えるけどね!」
なぜか遠い目をして微笑む優太と、少し寂しそうに笑う詩織。
二人の表情が、別れの時期が刻々と近づいてることを表してる。
「あっ、もう昼休み終わっちゃう!片付けないと、ほら、優太くんも帰って!」
さすが学級委員長の詩織。
いち早く授業が始まることを感知して、慌ただしく動き始める。
「じゃーな、海花」
「はーい」
じゃーなって……同じ学校内にいるのに?
「優太くん、少しでも多く会話したかったんだろうなぁ」
そんな詩織の言葉は私の耳に届くことはなく。
五限を知らせるチャイムが校内に鳴り響いた。