年下ヤンキーをなめちゃいけない理由
海花 side
家を出て数十分。
もうそろそろ戻ってもいいかな、そう思い、家に帰ると___。
「ねぇー、かわいいでしょ!」
「……写真一枚いただけますか」
「どれでも好きなの持っていってねぇ!」
そこには、何かを覗き込みながらキャッキャと騒ぐ二人の姿があった。
わぁ……よかった。
流くんとお母さん、すっかり打ち解けたみたい。それに流くんも、自然に笑えるようになってるし……。
そうして安心していたものの、お母さんが私を見て何かを隠した時に、はっきりと見えてしまった。
「ね、ねぇ……お母さん、それって……」
もしかして……と、問い詰めれば、お母さんは私から分かりやすく目を逸らしてシラをきる。
「えっ?何も持ってないわよ?」
「お母さん……流くんにそれ見せたの!?」
「や、やだなぁ。……しょうがないじゃない、可愛かったんだもの」
お母さんが「ねー?」と流くんに同意を求めると、流くんも小さく頷いた。
な、流くんまで……!
恥ずかしくて顔が赤くなるのを感じる。
だってだって、今お母さんが流くんに見せてたのは、私のアルバムだから。
「もーっ!なんで勝手に見せるの!」
怒ってもお母さんは口を尖らせてそっぽを向くばかり。
子供なの!?って、突っ込みたいところだけど……。
「もうっ、流くんも見ないで!」
私とお母さんの口喧嘩を全く気に止める様子もなく、再び私のアルバムを開いて眺めている。
「ちょっと無理、かも……ですね」
なによ、ちょっと無理かもって!!
流くんの手からアルバムを取り上げると、少しだけ不服そうな表情をされる。
「昔の私なんて見てもどうにもならないよ」
悲しそうに見つめてくる流くんに、苦し紛れの言い訳を述べる。
「……別に俺は今の海花先輩しか見てませんよ。俺の知らない先輩に興味があっただけで」
「っ……!」
「あら……」
ほ、ほら……!そうやって恥ずかしいセリフをサラッと言っちゃうんだから……!
お母さんも聞いてるのに!
しかも、そんな流くんのセリフを聞いたお母さんは口に手を当てて感涙している。
恥ずかしさのあまり何も言えないでいると、次の瞬間、お母さんがとんでもないことを口走った。
「流くん、今日はウチに泊まっていけば?お夕飯、これから作るわね〜!」
「えっ、ちょ、お母さん……!?」
「だって、もう少し流くんとお話したいもの〜」
だからって、お泊まり……!?
しかもお泊まりって……朝までずっと一緒って……こと、だよね……!?
「お気遣いありがとうございます。ですが、今日は遠慮しておきま___」
「そんな堅苦しいこと言わずに、ね!明日休みなんでしょ!」
丁寧に断ろうとする流くんが、まさかのお母さんの勢いで押し切られてしまっている……!
ダメだ、お母さんはテンションが上がってしまうと、どうにも強引になっちゃうんだから……。
「いや、えぇっと……」
「さぁ、今日の夕飯はイタリアンよ!」
「あぁ……」
こうなってしまったら、もうお母さんは止められない。
私と流くんは顔を見合わせて、苦笑する以外なかった。