年下ヤンキーをなめちゃいけない理由
「お待たせ、ごめんね遅くなって」
流くんが待つ部屋に戻ると、流くんはベッドにもたれてうとうとと船を漕ぎ始めていた。
眠いのかな……。
そうだよね、いきなり私のお母さんに紹介しちゃったせいで疲れちゃったよね。
私は部屋の電気を静かに消して、ベッドサイドのオレンジのライトをつけた。
いつも見ている顔だけど、寝ている時は子供みたいで可愛いんだなぁ、そんなことを思いながら、優しく金髪を撫でてみる。
「ふふ、かわいい」
そう呟いた次の瞬間。
___パシッ。
「え」
流くんの頭を撫でる手が、掴まれていた。
驚いて流くんを見ると、妖しげに光る彼の瞳が私を捉えている。
そして、そのままぐいっと引っ張られたかと思えば、私はベッドに横になっていた。
「っ、……」
「かわいーって、どーゆー意味ですか」
少し低く掠れた声の流くんに組み敷かれている状況が理解できなくて、ただただ、流くんの美しい顔を眺めることしかできなくて。
「っ、流く……?」
「ふっ、暗いけど顔真っ赤なの、かわいー」
ベッドサイドのわずかな淡い光が、流くんの表情を照らしてくれるけど、流くんはなんだか前よりも色気が……っ。
「なんで目そらすの」
「あ、ぅ……だ、って……」
「……だって、なに?」
な、流くん、やっぱり今日、甘いのと危険なにおいがする……。
この前、流くんが風邪を引いてしまった時のような。
「ながれくんが……かっこ、よくて」
素直な理由を口にすれば、流くんは待っていましたと言わんばかりに、私にキスを降らせた。
何度も、何度も。
触れるだけのキスを重ねながら、流くんの手が私の手をからめとる。
「っ……ん、ぅ」
角度を変えたキスに呼吸のタイミングが掴めず、どんどん苦しくなっていって、自分でも聞いたことがないような甘い声が漏れる。
「ねぇ先輩」
そう耳元で囁かれて、思わず腰が浮く。
体の奥にある芯がジンッと熱くなって、溶けてしまいそうな感覚。
「この前、どうなってもいいって言ってたけど。あれ、どこまで……?」
ツーっとスウェットの上から背筋を撫でられて、真ん中らへんで止まるけど、相変わらず流くんからの甘い私はたまらない。
「……なんでつけてねぇんだよ……」
ぼそりとつぶやかれた流れくんの声は、聞こえるはずもなく。
「ひゃっ……!?」
流くんの大きくて少し冷たい手が、スウェットの中に入り込んできた。
冷たい空気が地肌に触れる。
「意味わかって言ってたわけ?」
じかに体のラインをなぞるような手つき。
「っ、わかんな……ぁっ」
不定期に与えられる甘い刺激に耐えるのに精一杯で、流くんの言葉が全然頭に入ってこない……っ。
「……全部なんて言ったら、さすがに俺止まらないけど」
必死にふるふると首を横に振る。
全部って……そんなの……っ!
想像しただけで顔が真っ赤になっていって、他に何も考えられなくなってしまう。
「だ、め……ひゃあっ」
どんどん上に上がってきた流くんの手が、ソレの輪郭をなぞるように触れてくる。
「そんなにえろい声出してんのに?」
「っ、ぅ……なが、れくん……っ」
生理的な涙がポロポロと頰を伝って行く。
すがりつくように流くんの袖を握れば、再び降り注ぐ優しくて甘いキスの雨。
「……きもちいい?」
そんなキスにいつのまにか頭がぼんやりとしてきて、何も考えられなくなってしまうままに、彼の言葉にこくりと頷いてしまう。
流くんの手がギリギリのところで動くたびに身がよじれるような甘い刺激となって「好き」で頭がいっぱいになっていく___。
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すぅ、すぅ……と、規則正しい寝息が聞こえ始めた。
「は、まじか……」
幸せなお預けだな、とぼそりとつぶやかれた言葉は、夜の暗闇に溶けていった。