年下ヤンキーをなめちゃいけない理由
「卒業、おめでとうございます」
「ぅっ、あぁ……」
流くんは、静かに泣いていた私を抱きしめる。
その優しさが、いつか自分に向けられるものじゃなくなるんじゃないかって怖くて。
さらに涙があふれる。
「別れないよ、先輩」
「っ……!」
どうして。
どうして流くんは、いつもいつも、その時に私が欲しい言葉をくれるの。
「泣いてるの、聞こえたから。ちょっとだけ入るのとどまってたら、聞こえた」
私に会いに来てくれた。
私だけのために___一年生フロアから離れたこの空き教室まで。
それだけでも嬉しいのに。
「俺、先輩のこと、すげぇ好き」
そんな直球な言葉を素直に伝えてくれるの。
嗚咽でうまく返事ができない代わりに、必死で首を縦に振る。
___私も。
そんな意味を込めて。
「今日も先輩、すげぇかわいいよ。今だって触れてるのに、もっと触れたいだとか、もっと近づきたいだとか。……そんなことばっかり思ってる」
頭を撫でる流くんの手つきが本当に優しくて、やわらかくて。
「だから俺、先輩が思ってるその数十倍くらいは、先輩のこと好き」
甘く見積もって数十倍だ、と付け足す流くん。
そんなの、私だって……っ!一緒なのに……。
「これから離れちゃうね、先輩と」
やめてよ、そんなことわかってるよ。
会えなくなっちゃうんだよ……?
「どんな時でも、先輩がしんどくて泣いてるなって思ったら、ぜってぇ俺が会いに行くよ」
「っ、え……?」
「先輩が寂しいなら、いつでも通話する。連絡もする。会いに行く」
だから___と、流くんは一度言葉を切る。