きゅんする毎日の結末

真山side

 昨日泣かせたまま行ってしまったせとかに、なんて声をかけたらいいのか分からなくて、学校にはいつも通り来たのに時間ギリギリまで部室で過ごしていた。

「あれ? 颯太今日はまだいんの?」
「悪いかよ」
「なになにーっ! なんか機嫌悪くね? なんかあった?」
「他人の不幸に目を輝かせて近づいてくるとか信じらんねえ。思いやりって言葉を知らないのか」
「知らん」
「あー、そ」

 じゃあ俺も知らん。そっぽを向いて不貞腐れる俺に、興味をなくしてすぐに行ってしまった。
 そろそろいい加減行かないとなと、重たい腰をあげて鞄を手にして部室を出た。

 せとかの好きなやつって誰だよ。

 昨日からそのことが気になって眠れない。
 誰にでも打ち解けやすいせとかだから、クラスで俺以外によく話してるやつなんて結構いるし、その中で彼女がいるやつって言っても、よく分からない。
 別なクラスかもしれないし先輩かもしれないし、全然見当がつかないし!

「おはよう、真山。なんだ? 今日は遅いな」
「おはよう、ございます」

 廊下で担任とばったり会ってしまって、一緒に教室に行く羽目になった。いつもと違うことをすると、やっぱりダメだ。

 せとかのことは気になるけど、今まで気にならなかったのに、もしこのクラスの誰かが好きでそいつのこと見てたりしたらって思うと、そんなの耐えられない。
 もう、今日は真っ直ぐ前だけ向いていよう。

 今日は雨が降るって、今朝の天気予報で言っていた。
 結局、せとかに一度も声はかけられなかった。傘を持って足取り重く校舎から出ようとした時に、傘を持ってもいないせとかの後ろ姿を見つけた。

 今言わないと、後悔する。

 一日中せとかのことで頭がいっぱいだった。だから、せとかが行ってしまう前に、傘を差し出した。
< 11 / 12 >

この作品をシェア

pagetop