夫に私を殺させる方法
 私はイライラしながらも、表面上は平静を装ってはいた。しかし四年以上も連れ添ってきた妻には、見抜かれてしまったようだ。


「あなた、あと1時間程度で出口です。頑張って下さい。」

 妻は、そっと励ますように囁いた。
 振り返ると、とても心配そうな目で私を見ている。


「大丈夫だ。」

 私は虚勢を張った。
 そして妻を安心させるように、頷きを返した。――頷きを返す以外に、できることはなかった。


※※※※


「大丈夫だ。」

 夫はそう言って頷きましたが、その美しい額には、普段見たこともない汗が光っています。
 涼しい洞窟内であるというのに、やはり、その緊張は相当なものなのでしょう。


 さらに30分程度が経過しました。
 また一つ、絶好の殺害ポイントを、夫はスルーしました。流石に不安になった私は、夫を振り返りました。


「あなた、大丈夫ですか。」

 いざとなると、臆病な人なのでしょうか。


「――ああ。何とかするしかない。」

 夫は重々しく、そう答えました。

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