夫に私を殺させる方法
 ですが、夫の表情はいつになく厳しく、苦悶に満ちています。

 見ているこちらの胸が苦しくなるほどに、ソワソワして落ち着きのなくなった、その様子。


――ああ。この人も、苦しんでいるのね。


 その事実は、すとん、と胸におさまり、そして染み入りました。

 夫が、私を殺すことに、これほどまでの苦しみを抱いている――。その事実は、私の心を凪のような、穏やかな気持ちにさせました。


――この人と娘のためなら、死んでも悔いはないわ。


 私は、心からそう思えました。


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