夫に私を殺させる方法
 私が顔をあげると、妻はそっと、目線で合図をするように崖下を示した。


「今なら、誰にも見られていません。――どうぞ。」
「!!」

 まさか。
 ここで、崖下に向かって、放尿せよと?


 できるか――っ!!


「いや。ここでは。」
 私は首を振った。


――無理に決まっているだろう! 洞窟全体が、貴重な石灰岩の固まりなのだ。

 しかも、している途中で、妻のすぐ後ろの人に容易に気付かれてしまうだろう。そうしたら私はとんでもない変質者だ。

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