夫に私を殺させる方法
 再度、絶好のポジションが目の前にやってきました。

 一人ずつ膝立ちで進む細長い一本道。ヘッドライトで照らす足元以外に明かりはなし。

 1メートルほど左には断崖絶壁。どこまで続くのか分からないほどの深い穴に、インストラクターが注意を促していました。
 これ以上の場所は、この先、もうないだろうと思います。


――あと3メートル、2メートル、1メートル……。

 今がベストポジションというところで、私は、足を止めました。
 そっと、ヘルメットとヘッドライトを外します。


 後ろから来ている夫がぶつかってきたら、その拍子に横っ飛びをして、落下することを決めました。
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