夫に私を殺させる方法

――これほど動けるのなら、たしかに大丈夫ですよね。


 頷いた私は、電話を思いとどまると

「……じゃあ。」

 と言って、速やかに家に入ろうとしました。
 しかし、男は私の腕をはなさない。


「あの」

 私は、腕を離してほしいと身振りで促しましたが、男はハアハアと大きく息をするのみで、一向に離そうとしません。それほど苦しいのであれば。


「やっぱり救急車をー」
「必要ない」

 男は被せるようにそう言いながらも、私の腕をは な さ な い。


 結局、その日は、雨が止むまでの間、私の家の敷地内にあるビルトインガレージに置いている長椅子を、男に貸すことになりました。

 一人暮らしの屋内に知らない男性を入れるわけにはいきませんが、ガレージで少し休ませるくらいならば、大丈夫だと思ったのです。
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