夫に私を殺させる方法
 マリは私のことを忘れていた。それとも私が綺麗になりすぎて分からないだけだったのか? いずれにしても、私は一目でマリだと分かったのに、マリは私のことを歯牙にもかけないのだ。


 わざわざ名乗って思い出してもらうのも、なんだか負けたみたいで癪に触る。
 私は「――人違いみたい。」と呟くと、そのままさっさと、踵を返した。



 その後も、マリのことが頭から離れなかった。

 あの無感情女と結婚する男は、一体どういう男だろう。きっとろくでもない男に決まっている。私の彼氏の方がずっと格好よく、頼りになるはずだ。 


 さりげなく一時保育で働いている友人から、マリの情報を聞き出すと、マリは来週末に子どもを預けて、夫婦で洞窟探検ツアーに行くらしい。

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