青い海に揺らぐ
プロローグ

ブラインドの隙間から差し込むオレンジの光が、所狭しと並べられた本に縞模様を描く。


古いエアコンがゴォォと音を鳴らしながら吐き出す暖かい空気に、ついうつらうつらとしていたらしく、読みかけの本がしおりも挟まれることなく閉じられていた。


「んっ」


ぐっと腕を伸ばして軽く背伸びをしながら、ぐるりと首を回す。そのついでに図書室内を見渡せば、日も落ち始めたせいかそこには誰の姿もなかった。


特に珍しくはないこの状況に少しだけ寂しいと感じてしまうのは、ここ最近は見慣れるほど定位置にあったあの黒いふわふわ頭のせいだ。



──今日は来なかったな。


青い表紙を開いてペラペラと読んでいたページを探しながらも、頭の中は長い前髪に隠された深い海を思わせる色で埋め尽くされていた。

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