青い海に揺らぐ

それからというものの、私と青野くんの関係が変わったかと言われれば、そんなことはなく。


言葉を交わしたのもあれっきり。



それでも変わったことといえば、本格的に始まった冬が寒さを引き連れてきたことや、私の心が少しだけ強くなれたこと。


誰々ちゃんの彼氏にぶりっ子したでしょと、もう何度目かの身に覚えのないことを言われた時に、ついそんなことしてないと口に出してしまったのだ。


今までは黙って俯いているか、口を開いてもごめんと謝罪ばかりだった私からの反撃が思いもよらないものだったのか、一瞬時が止まったかのように、しん、とその場が静まり返った。


私自身、そんなことを言うのは初めてだったから驚くと同時に怖くなって。


なに言ってんの。
早く謝らなくちゃ。


あの時の刺すような圧を思い出して、そうなる前にごめんって謝って、それで、……それで?


してもいないことを謝って、それでどうなるの?


人の壁の隙間から、あの黒いふわふわ頭が見えたような気がした。


「私、そんなことしてないから」


もう一度念を押すようにそう言って、女の子達の間を割るように、早足でその場を後にする。


今まで高い壁のように思っていたけれど、身体ごとぶつかるように歩けば、あっけなく道は開いて。


ついにやってしまったという不安と高揚で、心臓が痛いくらいに脈を打っていた。

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