青い海に揺らぐ

きぃ…と開いた屋上に続く扉。

そこに誰もいないことを確認してから、あのさと話が切り出される。


「付き合ってほしんだよねぇ」


何もかもを省いたような告白だった。

それにどこか薄ら寒さを感じながらも、いつものようにお断りをする。


「うん、まぁわかってたけどさ」


さっきまでと何ひとつ変わらない態度だった。


「遊びでいいから、イイコトしようよ」

「え?」


そう言ってぐっと詰められた距離に、頭よりも先に身体が反応した。


持てる限りの力で先輩の体を押し返せば、尻もちをつかせられないまでも、少しだけ間隔を空けることはできて。


「……ってぇ」

押されたらしいお腹あたりをさすりながらも、全然痛くなさそうにニヤニヤする先輩。


「なに、そういうプレイ?」
「は? なんですか!?」
「いいじゃんいいじゃん。誰も見てないし」


そう言って近づいてくる先輩にやめてください!と叫べば、強く腕を掴まれる。


「何お高く止まってんだよ。どうせ男漁ってんだろ。知ってんだよ」


なにそれ。
そんなの知らない。


近づいてくる顔が怖くて、握られた腕が痛くて。

恐怖に声も出せず、足が震えて逃げることもできない。


壁に押し付けられていよいよやばいと唇を噛み締めた時だった。

< 13 / 32 >

この作品をシェア

pagetop