青い海に揺らぐ
「……」
「……」
何も言わない青野くんと、さっきの怖さがじわじわとぶり返してきて何も言えない私。
「じゃあ、俺はこれで……」
それに耐えきれなくなったのだろう青野くんが、その場から去ろうと腰を上げた。
「あの……!」
ここからいなくなる前に、これだけは言わないと!
「ありがとう、青野くん……!」
本当に怖くって。どうしようもできなくて。
あの時、青野くんが止めてくれなかったら、今どうなっていたかなんて考えるのも恐ろしい。
もうすでに少し先を歩き始めていた青野くんの足がぴたりと止まって、先に進むこともこちらを振り返ることもないままその場に立ち尽くしてしまった。
……あれ?
「……青野くん、だよね?」
もしかしたら違う人だったのかもと不安になって、違ったらなんて失礼なことを言ってしまったんだろうと後悔し始めた時。
「……そうだけど。よくわかったね」
青い眼を丸くした青野くんがこちらを向くと同時に、はらりと前髪が落ちてきてその目が少しだけ隠れてしまう。
……よかった。やっぱり青野くんだった。
「わかるよ」
だって、いつも見ていたもの。