青い海に揺らぐ

すとん、とまた隣に腰掛けた青野くんが、ポケットから取り出した眼鏡をかける。


いまだに上げられた前髪のせいで、いつもよりは無防備なその瞳をこちらに向けられて、改めて綺麗だなと思った。


「いつもと全然違わなかった?」
「まぁ、少しは」
「少しぃ?」

眉を顰めた青野くんに、気を悪くさせちゃったかもと焦る気持ちで付け加える。


「だって、綺麗な眼だったもの」

あんなに綺麗なのは、他に見たことがないから。


一瞬だけ不思議そうに目を瞬かせたと思ったら、次の瞬間にはぐしゃりと上げてた前髪を下ろしてわしゃわしゃと掻き乱す。


それだけでいつもの青野くんへと元通りになった。


「……変だろ」
「変? 何が?」
「目の色」


俯いてぽつりと溢した青野くんに、なにか気の利いたことを言えればいいけれど、何も思いつかないから正直な気持ちを口にする。


「嫌だったらごめん。でも本当に綺麗だと思ったの。深い海みたいな、綺麗な色」


あの時、眼鏡越しに始めて見たその瞳が忘れられなくて。


「……さっきはごめん。あんなとこ見せちゃって」


そんな綺麗な目に、さっきの光景を見せてしまったことを途端に恥ずかしく感じてしまう。

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