青い海に揺らぐ
1
私は平均よりも顔がいいらしい。
それを自覚したのは最近のことだった。
小学生の頃から可愛いと言われることは多かったけど、中学に上がってからはそれが少し違う方向で現れた。
よく告白されるようになったのだ。
初めての告白に浮かれて付き合うことになったのが中1の5月。
隣のクラスの男の子だった。
クラスの中心にいる可愛いマリアちゃんとその周りにいつもいる子たちに詰められたのは、そのすぐ後のこと。
いわく、小学生の時から好きだったのにと。
中学進学を機に引っ越してきて、知り合いが1人もいない私に最初に話しかけてくれた子たちだった。
私にとっては告白してくれた男の子よりも、マリアちゃんたちの方が大事で仲良くしていきたかったから、どうすればいいか分からないながらも、とりあえず謝ることにした。
それを許してくれたのか──今思えば許される必要なんてないんだけども──、だったら別れてよと。
しくしくと顔を伏せているマリアちゃんと、そのマリアちゃんを守るように囲んで立っている、私を睨むいくつもの目。
誰が発したのかはわからないその言葉に、初めて経験するこの状況に。
緊張して恐怖に震える喉が、うん、と。
わかったと掠れた声で頷けば、ぱっと明るい笑顔のマリアちゃんが顔を上げた。
「美紅ちゃん、ほんと!?」
可愛い可愛いマリアちゃん。
入学式の日、その笑顔にどれだけ私がほっとしたか。
「……うん」
「ありがと〜! やっぱ私たち友達だね!」
ぎゅっと握られた手が。あの時と同じ笑顔が。
今の私には、怖くて怖くてたまらなかった。