青い海に揺らぐ
5
始業式後の教室は、もうすでに誰もいなかった。
あの時と同じように2人だけの中、握った手を離されないことに少しだけ戸惑ってしまう。
「……俺、そんなに頼りない?」
「え?」
唐突に言われた言葉に、なんの話だろうと。
そう考えて、今日助けてと言わなかったことに対してだと気づいた。
「……ごめん」
私がもっと素直だったら、変な意地を張らなかったら。
青野くんはきっとすぐに助けに来てくれた。
「ごめん、違う。謝ってほしいわけじゃなくて」
はぁ、とこぼされたため息に、どうしていいかわからなくなる。
謝ってほしいんじゃないなら、どうしよう。
約束を破ったこと、どうすれば許してくれるのかな。
「ごめん、泣かないで。怖かったよな」
「……泣いてない」
「うん、でも泣きそう」
本当に泣いてなかったのに。
そう言われたら、ぽろっと涙がこぼれてしまった。