青い海に揺らぐ
いまだにあの時の、囲まれてかけられた圧を身体が覚えていて。
もうキラキラとした青春なんて望まないから、ただひっそりと過ごしたいだけなのに。
誰のものにもならない私を面白がってか、誰がモノにできるのかと競うように行われる告白に心が疲弊して。
それでも真摯に告白してくれる人だっているのだから、全部を無視することも出来なくて。
岡くんは、そんなひとりだった。
「綾瀬さん、図書委員でいいよね?」
「……うん」
断ることなんて出来るはずがない。
「えぇ〜本当にいいの!? ごめんねぇ、図書委員って放課後とか仕事あるんでしょ〜?」
「私には無理ぃ。綾瀬さんありがと〜」
「はーい! 女子は綾瀬さんが図書委員でーす!」
きゃぴきゃぴした声に、押し付けておいてどの口がと思いながらも、遠目に見えた岡くんが身体を硬くしたことに申し訳ない気持ちでいっぱいで。
言えない謝罪を飲み込む私の目の前で、岡くんの名前の隣に私の名前が板書されていく。
「綾瀬さん、ありがとね」
一学期に引き続き学級委員に推薦されたマリアちゃんが、書き終えた白いチョークを置いてにっこりと私に微笑んだ。