青い海に揺らぐ

あ、また来てる。


夏の暑さが尾を引いていたのも懐かしく、少しずつ冬の訪れを感じさせるように移ろいゆく秋のことだった。


週一回の図書当番を何度かこなしてわかったことだけど、うちの学校では図書室はあまり人気ではないらしく。


一人の方が気楽でいいからと岡くんを当番に来させず、放課後の暇な時間を図書室のカウンターでぼーっと過ごしていた。


そんな人の出入りの少ない中、何度も見かける顔があれば覚えてしまうのも必然で。


それがもっさりとした黒い髪が目元を覆う程に長く、さらにはその下に大きな眼鏡というあまりにも特徴的な姿であれば余計に。


そこそこの確率で遭遇する彼は、本を読んでいることもあれば、勉強してることもあったりと様々で。


貸出手続きの時にちらりと図書カードを盗み見れば、隣のクラスの同じ一年生ということがわかった。


──青野琉生くん。


綺麗な名前だな。

そう思うと同時に、隣のクラスなら私の嫌な噂も知ってるんだろうなと少しげんなりする。


でも青野くんは私を見て色めき立つことも、嫌な顔をすることもなかった。


お互いのことをよく知らないのだから当然なのだけれど、悪意と好奇に晒され続けていた私にはそれがとても新鮮で。


その日から隣のクラスの前を通る時に、あのもっさり頭がつい目に入るようになった。

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