青い海に揺らぐ

あの日以降、青野くんを見かけることが増えたような気がする。


隣のクラスは体育らしく、上からグラウンドを見下ろせば、あの特徴的な頭がすぐに見つかる。


もっさりと思っていた黒い髪は、どちらかと言えば柔らかそうにふわふわしてるし、走ればぴょこぴょことよく跳ねる。


どれだけ動いてもけろっとしてる姿に、意外と体力あるんだな、とか。

勉強してると思っていたら、たまにクロスワードパズルを解いていたこともあったりとか。

最近話題の本から、昔の文豪と呼ばれる人達が書いた本まで幅広く読んでいたりだとか。

あの作家の本好きだよな、とか。
あのシリーズよく読んでるよな、とか。


あ、そういえばあのシリーズ、最新刊がこの前入ってきたんだった。


「この本、新しいの出てますよ」

貸出手続きの時にふと思い出して、新刊が並ぶ本棚に手を伸ばす。


借ります?

そう聞こうと見上げたところで、驚いたような顔の青野くんが目に入って、思わず本を取り落としそうになった。


「……」
「……」

……そういや私たち、話したことないんだった。

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