処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜

　彼の気遣いを無碍にする事も出来ないので、ここは彼の言う通り、休む事にしたのだった。
　食堂で休憩している時。食堂へ1人のメイドが慌ただしく走りながら入ってくる。

「お嬢様、大変でございます…！」

　彼女の顔は血の気が引いているのが一目で分かる。

「どうしたの、そんな顔して」
「ナターシャという名前の女が、次々陸軍に連れて行かれまして…！」
「！」

　あの町長が言っていた、皇帝キムがナターシャという名前の女を集めているという話だ。このローティカでも起こっているのか。

「…もし、陸軍の兵士が来たら、こう言って。私はナジャだとね。それにここにはナターシャという名前の女はいないと付け足しといて」
「畏まりました。お嬢様」

　メイドは深々とお辞儀をして、去っていった。

「そういえば、近々ローティカで軍事パレードを行うみたいね」

　いきなりそう切り出してきたナジャ。私は目を丸くするより他ない。

「ナターシャ、あなたは皇帝に会った事ある？」

　前世ではがっつりその皇帝の関係者だった訳だが、転生してからは一度も会ってはいない。なので…

「会った事無いわ」

　と、答えたのだった。

「私は陸軍時代に何度かお見かけした事があるけど…皇帝は何考えているか分からない。そんな人には見えたかな」
「ナジャ…」
「悪い人には見えなかったけどね」　

　近々ローティカで行われる軍事パレード。戦争が劣勢に立たされている中で行う必要は、果たしてあるのだろうか。

「軍事パレードには皇帝も来ると聞いている。国中のレジスタンスや、反皇帝集団がローティカに詰めかけてくるかもしれない」

　ナジャは神妙そうな面持ちで、そう語った。となればザナドゥのレジスタンス…ケイン達も狙っているのだろうか？
　暗い雰囲気が、流れ出す。