処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜
 キムの目がぎょろりと光った。私は一瞬その目から放たれる圧にひるみそうになる。

「陛下、私は後宮には興味はございません!このままで結構でございます」

 と、正直に言ってやった。すると、キムと兵士の動きがぴたりと止まる。

「興味ないと、言ったな?」

 キムがもう一度、私の顔を見る。だが私はひるまない。
 前世であれだけ「お世話」になったのだ。この程度でひるむわけがない。

「ええ、後宮での暮らしは私には必要ありませんわね。ですから興味ありません」
「ふん…そう強がるのもナターシャに似ている」
(…もしかして悪手を打ったか?!)

 そしてキムは目線を兵士に向けた。兵士がこぞって私とナジャを縄で縛り付けてくる。

「くっ…やめてください!」
「やめなさい!」

 そう言っても彼らの耳には届いていないようだ。

(くそっ…)

 パレードに行かなければよかった。という後悔が私の胸の中に湧いて出てくる。

(行かなきゃよかった…)

 頭を垂れて、抵抗するのにも疲れた時だった。いきなり爆発音と爆風が巻き起こる。

(もしかして…!)
「ナターシャ、ナジャ!早く!!」

 メイルの声がした。どうやらこの爆発はあのウサギの仕業らしい。私はもたもたしつつも声のする方に向かって走り出す。

「走って!」

 とりあえずは路地裏に向かって走り出す。が、途中で私の身体の動きが止まった。

「なんで…」

 私の右肩を、キムがぐっと抑えている。私は目を丸くしながら後ろを振り向くと、キムが不気味なまでに笑っていた。

「もう逃がさんぞ」
「なぜ、私なのですか。他にも女くらい…」
「お前が気に入った、だから離さぬ」
「っ…!」

 メイルとマッシュ、そしてナジャも縄で捕縛され始めている。私の元にもすぐさま兵士が駆けつけて、私を縄で厳重に縛る。

「さあ、後宮へ行こう。ナターシャよ」
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