処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜
 私とナジャは捕縛されたまま後宮へと連行される事になった。メイルとマッシュは捕縛こそされたものの、なぜか最終的には縄は解かれて家に帰るよう促されたのだった。

「ナターシャ、ナジャ…!」
「元気にいるのよ…!」

 マッシュとメイルが辛そうな眼をして、迎えに来た馬車に乗った私達を見送ってくれた。

(彼らはこの事をリークに報告するだろう。リークがどう行動に出るのか…)

 馬車からは陸軍兵士とレジスタンス双方の死体が転がったままだ。リーダーは見当たらないが、ケインの死体はまだ存在している。
 私は彼へ追悼の意を心の中で表す。

「酷いものね…どうしてこんな事に…」

 薄暗く簡素な馬車の中で、悲壮感漂うナジャの声が響く。

「ナジャ…」
「私達、これからどうなるのかしら…それと、ナターシャって言ってしまってごめんなさいね」
「いや、あなたは悪くないわ。ああいう銃撃戦が起これば名前を叫ぶのも仕方ないわよ」
「確かにそうね…」
(でも、パレードに行かなかったら…という後悔だけは残るな…)

 この後悔はナジャの為にも、胸の中にしまっておく事に決めた。
 それにしても、馬車の揺れはすごい。前世で乗った馬車はここまで揺れなかったはずだが、ああ、火あぶりの刑に処される時に乗ったあの台車はすさまじく揺れたような記憶がある。

(これ、もしや罪人用の馬車か?)

 もし、そうだとすると簡素な造りも、硬い席も、揺れ具合も納得できるものだ。

「…結構揺れるわね」

 ナジャも揺れるのをしっかり理解していたようだ。

「ナジャ大丈夫?」
「私は大丈夫よ。ナターシャこそ大丈夫?」
「私も平気」

 このままローティカから帝都の後宮まで移送されるのだろうか。もしそうならかなりの移動距離になる筈だが。

「休憩とかないのかしらね」
「ナターシャの言う通り休憩は欲しいわ。でも、贅沢言える立場じゃないし…」
「そ、そうよね…」

 ふと、私の頭の中にリークの顔が浮かび上がった。彼は今どうしているだろうか。

(リーク…)
 
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