処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜
 兵士によって、部屋の扉ががらがらっ…と開く。扉の中は既に照明がなされていた。
 佇まいは簡素なベッドが計2つ。前世で皇太子の妃、第一夫人だった私からすればこの部屋が侍女用の部屋である事は一発で分かった。それも下級の侍女用の部屋だ。

「入れ、追って指示を出す」

 乱暴にざくざくと縄が解かれ、押し込められるようにしてその部屋に入らされた。

「わっ」

 勢い余って、床に打ち付けられるような格好になった私。

「だっ大丈夫?!」

 ナジャに心配されるも、私は何とか大丈夫だと返したのだった。

「それにしても…どうなるのかな」

 ナジャの冷たい声が部屋に響く。

「ね…」
「ナターシャ、お腹減ったね…」
「私も…」

 お腹が空いたのは共通のようだ。すると部屋の扉を軽く叩く音が聞こえて来る。

「はい」

 ナジャが警戒しながら扉を開けると、まだ十代後半くらいの若い下級侍女が2人トレーを持って立っていた。

「お食事を用意しました。あと、専用の腕輪を付けさせて頂きます」

 侍女が私の左腕に、木彫りのプレート付きの布製の腕輪を付ける。

「225?」

 私の腕輪にある木彫りのプレートにはそう、番号が記されている。

「以後、その番号で区別させて頂きますので」
「わかったわ」

 実際ナターシャばかりだと、名前で区別は難しい。となると番号で区別するのは、良い案と言えるだろう。

(その辺は頭が回るのな) 
「こちら、夕食です」

 トレーの上にはライ麦の丸いパンが2つ。そしてクラムチャウダーとマッシュポテトにスプーンが入っている。
 
「失礼しました」

 おどおどしながら、侍女はこちらへ頭を下げながら部屋を退出していった。
 
「…」
「…」  

 しばらく無言が流れた後、ナジャが口を開く。

「ご飯、食べましょうか」
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