処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜
 料金を支払い大衆食堂を出る。すると大衆食堂に入る前よりも、人の往来が増えたような気がする。気のせいだろうか。

「早く準備を」
「片付けを」

 というような声があちこちから聞こえてくる。私とリークはネックレスをつけ直すと、人々の動きに注視してみる事に決めた。

「ねえリーク、何かあるのかしら」
「うーん、あちこちの店で道沿いに置いてある物を片付けだしているように見える」

 確かにリークの言う通り、看板や椅子と言った道沿いに置いてあるものが次々と撤収されていくように見えた。

「何か通るのかしら」

 道沿いに置いてある物をどかす。という事は即ちその道に何かが通るという事だろう。何が通るのかはまだ分からないがほんの少し、嫌な予感はする。

(軍隊か…?)

 仮に軍隊パレードなら旗なんかを飾ったりして、もっと街は「それらしい」雰囲気になる筈だが、今はそのような雰囲気は見られない。

(なんだろうか…)

 すると、大通りから男の声が聞えて来た。

「もうすぐ軍隊が来るぞ!!皆建物の中へ入れ!!」

 やはり軍隊がここを通るようだ。私はリークの腕を握って、建物の中へと入る。

(ここ、水鏡があった場所か)

 建物は偶然にも、水鏡があった場所だった。私とリークは建物の中から道の様子を伺う事にする。

「ナターシャ、陸軍か?」
「おそらくそう」

 するとかつかつという、蹄を鳴らす音がかすかに聞こえ始める。少し開いたドアから音のする方角へ頭を向けると騎馬隊の先導が見えた。

(陸軍!)

 騎馬隊は徐々に近づき、ついには私とリークのすぐ目の前を通る。黒い軍馬に冷たいオーラを放つ騎馬隊。あの頃からちっとも変ってはいない。
 私とリークは騎馬隊とその後ろに続く歩兵による冷たい行進を、ただただ眺める事しかできないでいる。


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