処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜
 あれから時間は流れた日の事。
 夕食を食べ終わり、入浴も済ませた後は自室でゆっくりと過ごす。

「この化粧水いいな」

 リークがくれた化粧水は、冷や冷やしていて肌によく馴染んでいる。

「あ…」

 ふと、脳裏にウサギが浮かんだ。すると部屋の扉をノックする音が聞こえる。
 リークが寝間着に着替えて、こちらへとやってきたのだった。

「リーク、どうぞ」
「失礼する。ウサギについてだ」
「ああ…」 
「明日の昼に放とうと思ってな」

 いつかは別れの時がやって来るとはいえ、私の胸の中では寂しさと、手放したくない思いが湧いて出ていた。

「…ねえ、リーク」
「ナターシャ?」
「飼うのは…駄目よね?」
「…向こうにも、家族がいるかもしれないし」

 リークの言う事はもっともだ。私は自分に強くリークの言葉を言い聞かせ、納得させる。

「わかったわ…じゃあ、今日の夜は一緒に寝ない?」
「この部屋に移動させるという事か?」
「ええ、それでリークも一緒に寝ましょう」  

 リークは頷いた後、ウサギをケースごと私のいる部屋に連れてきたのだった。

「ここに置こうか」 

 リークは、ベッドの横にウサギのいる木のケースを慎重に置いた。
 ウサギはいつも通り鼻を動かしている。そんなウサギの周りに古いタオルを敷き詰めると、私達も寝る準備に入るのだった。   

「そろそろ寝ようか」
「そうね」

 リークとベッドに入り、部屋の照明を暗くした。ちなみにいつもよりも明るめに調整している。

「…」

 リークの方が寝るのが早かったようで、もう寝息を立てている。やはり疲れているのだろうか。

(もう少し家事が出来るようにならないと駄目だな…)

 明日はウサギとの別れ。別れが終われば2人の生活に戻るのだ。

(リークとお別れは…嫌だ)

 なぜか自分でも分からない程唐突に、心の中で呟いてしまう。

(私はリークとずっと一緒にいたい)

 胸の中がズキンと痛くなる。目の前にはリークの背中が見えた。
 私はリークの背中に手を置いて、目を閉じた。

 
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