処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜
 気がつけば熟睡していた私はゆっくりと目を覚ます。 

「おはよう、ナターシャ」

 リークは既に起き上がり、ウサギがいる木のケースを持って部屋から出ていこうとする所だった。

「おはよう…私も行くわ」
「起きがけは無理しない方が…」
 
 と、リークが制するが私は起き上がって、木のケースを一緒に持った。

「♪」

 ウサギの機嫌は良さそうだ。
 朝食を食べ終えて、片付けを済ませると私は使わなくなったブラシで、ウサギの毛を解いていく。

「~♪」

 ウサギは見るからに気持ち良さげにしている。この後お別れするくらいなら綺麗にして送り出そうと考えブラッシングしているのだが、ウサギはその辺理解していないようだ。

「気持ち良さそうだ」

 リークもウサギの様子を見に来る。

「ブラッシングが終われば、返そうか」
「…そうね」

 私はリークにそう返事をすると、更に念を込めて丁寧にブラッシングをしたのだった。

「うん、良い感じね」

 ウサギの毛艶は今まで一番綺麗になった。それを見てリークは声をかけてくる。

「行こうか」
「はい」

 迷彩魔術のかかったネックレスをつけて家を出る。ウサギを抱いて森の中を20分くらい歩いた後、リークは立ち止まった。

「このあたりで…」

 リークの言葉を受けて、私はその場にしゃがむと抱いていたウサギを降ろして、前へ行くよう促した。

「お家に帰りなさいな」

 そう寂しさを押し殺しながらウサギに話しかけた。するととことこと歩きつつ時折勢いよくジャンプしながら、ウサギはやがて森の中へと消えて行ったのだった。

「行ってしまったわね」

 思ったよりもあっさりとしたお別れに、どこか拍子抜けしている自分がいる。
 ひょっとしたらウサギは私が思っていたよりも、逞しかったのかもしれない。

「元気に暮らしてほしいな」
「ええ…」

 私とリークは、ウサギが向かっていった先をゆっくりと眺める。
 こうして、ウサギとの生活は終わりを告げたのだった。

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