時を刻まなくなった時計
「………はぁ」
 雅やかな宙を見ていると、途方もくれない悩みを思い出してしまうのだから困ったものである。

 弱った顔からは……弱った顔をした青年からは、濃密な色気がもんもんと流れ出ている。
 それは、顔立ちがすこぶる整った青年自身のせいなのか。それとも、着流しにしている趣のある着物のせいなのか。あるいは、その両方か。
 よくは分からない。
 ただ、障子の前で座っているその姿はとても美しかった。


< 3 / 53 >

この作品をシェア

pagetop