時を刻まなくなった時計

「おじいちゃんねぇ…。私は、別のとても大切な人に会いにいくわ。たとえ、それが地獄でも」

「……うん、そっか。その大切な人に会えると良いね」

 孫は、おじいちゃんじゃないの? とは聞かない。きっと、悟ってくれたのだろう。聞いてはいけないということを。



 もう少し、話をしてから孫は時間だから、と病室を出ていった。

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