時を刻まなくなった時計

 そういえば、体が軽い。まるで若かりし頃の……。? 

 そうか、私は若返ったのか。

 もう、心は年老いてしまった私にとって、あまり驚きが大きくない出来事であった。

 皺だらけであった手は艶すら伺える若者の手になっている。

 衣は当時、気に入りだった青いリンドウの花の着物だ。波打ちながら後ろに流れているのを見ると、少し風が吹いていることがわかる。

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