迷宮階段
☆☆☆

 それから涼子とふたりで散々遊んで、ようやく家に帰ってきたのは夜の九時を過ぎていた。
 涼子の家は母子家庭で、この時間帯には母親が仕事に出ているため自由にできるらしい。

「ただいまぁ」
 一応リビングを確認しておくと、お母さんがテレビを見ていた。

「おかえりー」
 声には出すものの、こちらを見ようともしない。

 ゴミだらけになったリビングの中からは生ゴミの匂いが漂っている。きっとお弁当の食べ残しをそのままにしているのだろう。
「少しは片付けしたら?」

 換気扇をつけながら言うと、お母さんはテレビに目を向けたまま「んー」と、生返事をする。その姿はまるで過去の自分そっくりだ。
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