迷宮階段
☆☆☆

 翌朝、私は汚れた部屋の中からどうにか洗いたての靴下を探し出して大急ぎでキッチンへ向かった。
 靴下がなかなか見つからなかったせいで、遅刻しそうな時間になってしまった。

 テーブルの上に置かれている一万円札を握りしめ、誰にも声をかけずに家を出る。途中のコンビニで好きな菓子パンとジュースを買い、それを食べながら学校へ向かった。

「おはよぉ真美。今日は遅刻寸前だったね」
 教室へ入ると涼子が近づいてくる。

 ホームルームが始まるまであと五分だ。どうにか遅刻せずに済んだ。
「頭ボサボサじゃん。ちょっと待ってね」

 涼子はそう言うとカバンからブラシを取り出して持ってきてくれた。
「ありがとう」

 そう言ってブラシを受け取ってから、別に急いで来る必要はなかったんじゃないかと思いあたった。
 今の両親なら、私が学校に遅刻したって文句は言わなかったかもしれない。
< 114 / 164 >

この作品をシェア

pagetop