迷宮階段
 このまま尚也と付き合うのもありかもしれない。そうすれば、私は私が理想としてきたものをすべて手に入れることになるんだ。そう思うと胸がときめいた。

「うわぁ! 真美ってばまた財布変えた?」
「うん。新作が出たからお父さんに買ってもらったの」

「それってすごく高いんでしょう? 雑誌で見たよ!」
「確か三十万円くらいかなぁ」

「すごーい!!」
 私が持っているものはすべてブランドものに切り替わり、隣にいるのは学年トップのイケメンに変わった。もう、昔の私はどこにもいない。

 時折目の端に里子の姿が見えるけれど、もう何も気にならなくなっていた。
「ねぇ、麻衣。麻衣もすごいと思うよね?」

 涼子に話し掛けられた麻衣が仏頂面で頷いている。
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