迷宮階段
「そんなこと気にしなくていいのに。私たち、友達なんだから」
 そう言って麻衣の手を握りしめる。すると涼子が大げさに「真美ってば優しい!」と囃し立ててくる。

「う、うん」
 麻衣は私に手を握られて視線を落とす。どこか怯えているように見えるのは気のせいかな?

 そう思っていたときだった。不意に涼子が「あっ」と声を上げたので視線をそちらへ向けた。
「涼子、どうしたの?」

「補導員だよ、やばいかも」
 言われて確認してみればすっかり夜になった街の中を数人の大人たちが歩いて見回りをしている。

 腕には黄色い勲章がつけられていて、そこには補導員という文字が確かに見て取れる。
 私はチッと小さく舌打ちをした。時間はとっくに九時を過ぎている。

 こんな時間に中学生だけで出歩いているとバレたら、家や学校に連絡されてしまうかもしれない。
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