迷宮階段
「早く行こう」
 青ざめた涼子に促されて私は補導員たちに背を向けて歩き出す。

 急に走り出したら怪しまれると思って、できるだけ自然を装って動き出したつもりだった。けれど補導員たちは私達に気がついて小走りに駆け寄ってきたのだ。

「ちょっと、君たち」
 男性の声が後方から聞こえてきてヒヤリとする。

「な、なんですか?」
 引きつった笑みを浮かべて振り返る。

 男性は四十代半ばくらいか、筋肉質でガッシリとした体つきをしている。
「君たちまだ中学生じゃないのかい? 保護者の人は一緒?」

 聞きながら周囲を確認してそれらしい人がいないか探している。けれどそこに私達の保護者はいない。
 そうこうしている間に、他の補導員二人もこちらへ近づいてきた。
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