迷宮階段

　そんなある日のことだった。
「榊原さん。ちょっとこっちへ」

　朝のホームルームが終わると同時に担任の矢沢先生に呼ばれて私は職員室へ向かった。職員室の中は誰かが淹れたコーヒーの香りが漂っている。

　先生は私をパーテーションの奥へと連れてくると、そこの丸イスに座るように促してきた。
　私はこんな安っぽい椅子に座るのは嫌だったけれど、我慢して座る。お尻が痛くなりそうで顔をしかめた。

「榊原さん。あなた最近家に戻らずに遊んでいるようじゃない」
　先生は座らず、私の前で腕を組んで立っている。その目は釣り上がり、私へ向けて怒っていることがわかった。

「だからなんですか？」
　私は首をかしげてそう質問した。