迷宮階段
 そんなことを本気で言っているんだろうか。聞くのも馬鹿らしくなって必死に欠伸を噛み殺す。
 きっと矢沢先生は熱血教師を演じて自己満足したいだけなんだ。

「それに、もっともっと努力しなきゃダメよ。最近また宿題をしてきていないでしょう?」
「宿題と言えば他のクラスの八木くんもしてきてないんじゃないんですかぁ?」

 幼馴染だった弘志は今はC組にいる。C組はもともと尚也がいたクラスだ。
 そして今も、前と変わらず宿題を忘れているに違いない。

「他のクラスのことは今関係ないでしょう?」
「でも、私だけ注意されるのは嫌なんですけど」

 先生を睨みつけてやると、小さく溜息をつかれてしまった。まるでバカにされているように感じられて、胸の奥がムカついてくる。
「それに八木くんは英語のテストでは毎回学年トップよ」

「え?」
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