迷宮階段
　予想外の言葉に私は思わず目を丸くしてしまった。だって、あの弘志が学年トップの成績を持っているなんて思ってもいなかった。

「八木くんには夢があるのね。だから、その夢に必要なものもちゃんと自分で理解して行動しているの」
　弘志の夢は確かイースポーツの選手になることだ。国際試合にも出るようになるだろうと、言っていたことを思い出す。

　なんだか胸の奥に感じていた苛立ちが別の物に取って代わるのを感じる。焦りに似た、なにかだ。
　なんだか自分だけ取り残されてしまっているような気分になるのは、きっと先生のせい。先生が私をこんなところに呼び出して、くだらない話を聞かせたせいだ！

　私は勢いよく立ち上がり、その拍子に丸椅子が後方に倒れてしまった。だけど気にせず走り出す。
「ちょっと、まだ話は終わってないわよ！？」

　先生の声が聞こえてきても振り向かなかった。
　こんな担任いらない。私を不愉快にさせる人間は全員……交換してやる。
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