迷宮階段
☆☆☆

 この中学校には今年赴任してきたばかりの若い女性教師がいた。なかなか授業がうまく行かず、生徒たちから笑われて泣いてしまうこともしばしばあるらしい。

 そんな教師ならきっと、私を呼び出すようなことはしないはずだ。
「担任の八木ミエ先生を西村杏先生に交換」

 誰もいない階段に私の声だけが響く。
 これでもう邪魔者はいない。みんなみんな、交換してやった。

 自然と笑みが浮かんでくる。
 堪えきれずに笑い出したら、今度はどんどん声が大きくなっていく。

 私は階段の下から四段目に立ちお腹を折り曲げていつまでも笑い転げていたのだった。
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