迷宮階段
☆☆☆

 二階建てのアパートはとても古くて外階段は錆びて歩く度に嫌な音を立てた。
 ここへ来るまでに夜は一層深くなり、街頭がなければ歩くことも難しい真夜中になっていた。

「ボロアパートでごめんね」
 グリーンが私を気遣って声を駆けてくれる。

 どこでもいい。あの家以外なら、どこで寝たってきっと天国だ。
「ここが友達の部屋」

 エイミが二階の一番奥の部屋で立ち止まり、チャイムを鳴らした。壁が薄いのか、その安っぽい音が外まで聞こえてくる。
 しばらく待っていると中から鍵が開く音が聞こえてきた。

「ほら真美。挨拶挨拶」
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