迷宮階段
☆☆☆

「お父さん! お母さん!」
 勢いよく玄関を開けて叫ぶ。

「お父さん、お母さん聞いて!」
 叫びながら家の中の電気をつけていく。

 廊下、キッチン、リビング、寝室。だけど誰もどこにもいない。
 ここまで走ってきたことで呼吸する度に肺が痛くて、今にも倒れてしまいそうだ。

「ねぇ、ふたりとも、いないの!?」
 家の中はとても静かで人の気配が感じられない。ゴミばかりの中で、小さな虫が動く音だけが聞こえてくる。

 一度冷静になって玄関へ戻り、厳重に鍵をかける。それからまた家の中を探してまわった。
 トイレ、お風呂、二階の物置。でも、やっぱり誰もいない。
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