迷宮階段
「なんでこんなときに誰もいないの!?」
 誰かに話を聞いて欲しい。危険な目に遭ったんだから、助けて欲しい。

 再びキッチンへ戻ってくるとテーブルに白い紙が広げて置かれていることに気がついた。その上には銀色の指輪が大小ひとつずつ置かれている。

「え?」
 紙に書かれている文字に視線を走らせて思わず呟く。それは離婚届だったのだ。すでにふたりの名前が書かれて、ハンコも押されている。

「嘘でしょ!?」
 離婚届を乱暴に握りしめた拳が小刻みに震えている。

 元々私が無理やりくっつけたふたりだ。性格が合わないのは仕方のないことだった。
 だけど、なにもこんなときにこんなものを置いて、ふたりともいなくなることないじゃん!

 これから先の私はどうなるの?
< 149 / 164 >

この作品をシェア

pagetop