迷宮階段
戻す
 キッチンの床に座り込んだまま朝が来ていた。雀のなく声が外から聞こえてきて私はようやく首だけで窓を外を確認した。
 昨日は一睡もせずに両親の帰りを待っていたけれど、結局ふたりとも帰ってくることはなかった。

 お母さんが言っていたように、荷物を取りに戻って来て、離婚届を提出すればそれですべて終わりなんだろう。
「なんで……」

 気がつけば頬に涙が流れていた。
 こんな風になるために交換したんじゃない。

口うるさいのが嫌だっただけ。
沢山お小遣いをもらいたかっただけ。それなのに。

「私、一人ぼっちだ」
 ポツンと座り込んで、呟く。誰かに相談したいけれど、誰の顔も浮かんでこない。麻衣も香も涼子も尚也も。みんなみんな交換した相手だ。
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