迷宮階段
「ど、どうしてここに!?」
「窓が空いてたよ。不用心だなぁ」

 金髪男が指差した先はリビングだ。両親のどちらかが鍵を開けっ放しにしたんだろう。
「それにしてもきったねぇ家だな」

 ピアス男が床にガムをペッと吐き捨てた。甘いミントの香りが生ゴミの匂いと混ざり合って気持ち悪い。
 私はじりじりと後ずさりをしてふたりと距離を取り、勝手口へと走った。幸いここも鍵がかかっていなくてすぐに外に出ることができた。

「逃がすな!」
 男が叫び、追いかけてくる。

 空はオレンジ色に染まる手前で、今は夕方近くなのだとわかった。
 私は必死に走りながら願った。

 もうこんなのは嫌だ。こんな悪夢ならいらない。
 全部全部、元に戻して……!!
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